『痛姫』を読んだ感想 | 引きこもり男子と傷を持つ少年の成長ストーリー

『痛姫』は、七木桂さんによる携帯コミック発の漫画です。電子向けらしく、とてもすらすらと読みやすい絵柄・内容で、発表された2011年頃とても話題になっていました。

『痛姫』は2018年2月時点で、コミックスは2巻まで刊行されています。

1組のカップル、2人の成長を丁寧に描いた、好感度の高い作品です。今回はこの『痛姫』をご紹介します。

『痛姫』の作品紹介

登場人物

木原敬太（受け）

高校生。漫画家を目指す少年。家庭の事情で引きこもりを続けている。
アニメ『ミルキィ戦士』のルリノたんを嫁として愛する筋金入りのオタク。

百瀬晴海（攻め）

敬太の兄の友人。母に捨てられ、祖母と暮らしている。
見た目チャラチャラしているが、意外と真面目なところがある。

あらすじ

敬太は、漫画とゲーム、そしてアニメ『ミルキィ戦士』をこよなく愛するガチオタク。小学生の時に母を亡くしてから、引きこもり生活を続けながら漫画を目指して投稿をしている。

ある日、敬太の兄・優太の友人の百瀬が家にやってきた。「一緒にゲームしようぜ」と敬太の部屋に上がり込み、物色を始める百瀬は、敬太が観賞用に買った『ミルキィ戦士』ルリノたんのコスプレ衣装に目を付ける。

「着てみてよ」
とんでもないと断る敬太だったが、早く部屋から出ていってほしいと願うあまり、衣装を着ることに同意してしまう。
すると、コスプレ衣装を着た敬太に、百瀬が手を出してきて――？
 

『痛姫』のみどころ

まず、タイトルと表紙で「女装癖のある受けとイケメン攻め」の話というイメージが先行してしまいますが、敬太に女装癖はありません。むしろ、コミックスでのカバーをめくった本体表紙の方が本来の内容に近く、くすりと笑えます。

描きこみ線の少ない丁寧な線は、かすれもなく、とても携帯映えする画面構成になっています。背景も、携帯での見やすさ重視のためか整理され、すっきりしています。

母親の死、引きこもり、親に見捨てられ祖母と同居、自分の未来への悩み、とよくよく内容を読み込んでみれば相当に重いテーマの話なのですが、それでもさらっと読めて読後感も爽やかなのは、この好感度の高い絵柄ゆえなのでしょう。

エッチシーンもへたにシーツなどでごまかさずきちんと描かれているのですが、BL初心者の方でも比較的すんなりと受け入れられるであろう漫画です。
しかし、内容はかなりしっかりとしています。

画面構成こそ電子らしくさらりとしていながら、前述のとおり内容は重めです。そして、よくある「お手軽に始まり脈絡もなく突然のエッチ」だったと思いきや、実は背景に、きちんとした人間らしい考えがあってのことだった、と分かります。

自分の世界に閉じこもっていた敬太は百瀬に影響をされ上京し、同居を始めるなど、引きこもりから脱して自分の道を歩き出そうと努力します。百瀬もまた、敬太のことを大事にしようという気持ちを大きくしていきます。

ひとつのカップリングの2人の話で丁寧にストーリーがゆっくりと進んでいくので、穏やかな気持ちで安心して読めます。BLに触れてみたい人にも、読み込んでストーリーを楽しみたい人にも、どちらにもおすすめです。

『痛姫』の現在・今後

『痛姫』は、2018年2月時点で、コミックスは2巻「ライバルは隠れオタク」まで刊行、電子では続編の「3」が好評配信中です。

3では、2で登場した隠れオタクの成沢駿介と、敬太の兄・優太のスピンオフストーリーも進んでいます。ぐっと表情が豊かになり、描きこみも増えていますが画面はうるさくなく、読みごたえある漫画になっています。

電子でまとめて読むもよしですが、書籍版で読んでも違和感がほとんどなく、手元に残したい方には書籍もおすすめです。
引きこもりだった敬太がどんどんかっこよくなっていく『痛姫』、今後の2人の成長と、スピンオフの2人の話もとても楽しみな漫画です。
 

『痛姫』の電子コミック情報

■痛姫（1）

著者名：七木桂
出版社： シュークリーム
連載誌・レーベル：moment
ページ数：209ページ
立読ページ数：19ページ
ファイルサイズ：49.9MB

対応デバイス：Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/ブラウザ楽読み

価格：500円 (税別)

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