『恋する暴君』をレビュー!弱気な年下攻め×強気な男前作品の金字塔
『恋する暴君』は、高永ひなこさんによる長編人気作です。2005年2月に1巻が発売されてから、2018年4月現在10巻まで出ています。
発表されてから13年、変わらぬ人気と洗練されていく絵柄、ドタバタかと思いきや胸がぎゅっと苦しくなるようなストーリー。ファンタジーのようでありながら、リアルな周囲の反応やキャラクターたちの悩み苦しむ姿など、トータルでバランスよく楽しめる漫画です。
これほどまでに長い間人気が続いている『恋する暴君』とはどのような漫画なのか、今回はその魅力についてご紹介します。
-目次-
『恋する暴君』ってどんな作品?
まずは『恋する暴君』の登場人物やあらすじについてご紹介していきたいと思います。
『恋する暴君』の主な登場人物
巽 宗一(受け)
大学院農学部の博士課程にてバイオ技術を研究中。怒りっぽく凶悪・凶暴、すぐに暴力をふるう。
しかし、理不尽なことや正義・倫理には敏感で、人が口をつぐみがちなことにも正直に、悪は悪だと言い切る正義を持つ。
長髪細身、あっさりとした顔立ちに丸メガネ。弟の巴が男に走ったことと自らの過去の経験により、ホモが大嫌い。後輩の森永に告白をされ、戸惑い拒絶しながらも、森永の思いにわずかながらもじょじょに応えていく。
森永 哲博(攻め)
大学院修士課程、宗一の2年後輩。
厳格な家庭に育ち、過去に大きな傷がある。宗一に片思いして5年目に入る。
告白をした後、ほぼ強引ながら体の関係を持ってからも心を許してくれない宗一に、どうにかして自分の方を振り向いてほしいと奮闘中。
『恋する暴君』のあらすじ
ゲイの森永は、ホモ嫌いを公言している巽宗一に片思いして丸4年。「そろそろ諦めた方がいいのかな」と思っていたある日、知り合いから不思議な薬の入った瓶をもらう。
なりゆきで森永の家で酒を飲んでいた宗一は、森永が家を空けた隙に、その瓶を酒が入っていると勘違いし、飲み干してしまう。しかしその中に入っていたのは何と媚薬だった。
勢いで体の関係を持ってしまったが、そこから関係が急激に進展することもなく話は続いていく。
森永の過去の男、家族関係。距離が近づいたかと思えば離れ、そしてまた近くなる。身体の距離と心の距離はすぐに比例せず、すれ違いとぶつかり合い、そしてお互いを深く知っていく、2人の未来はいったいどうなる?
『恋する暴君』のみどころ
この作品は高永ひなこさんのデビュー作『チャレンジャーズ』という作品のスピンオフです。
『チャレンジャーズ』の主役、巴の兄・宗一と、宗一を慕う後輩の森永の話なので、森永がなぜ宗一に惹かれたのか、どのようにして告白に至ったのか、などが描かれています。
そのため、まずは『チャレンジャーズ』を先に読まれることをおすすめします。
読んでいなくても分かるようにはなっていますが、もともとスピンオフなので、読んでおいた方が、キャラクターの気持ちがより深く分かります。
森永は、嫌がる宗一に毎回ほぼ強引に襲い掛かってエッチに至りますが、宗一が森永にデレたり甘えたりすることはありません。
頼み込む→拒否→襲い掛かる→拒絶→なし崩し的にエッチ→宗一が怒る、のパターンなのですが、それがワンパターンだと感じないところがこの作品のすごいところです。
ホモが嫌いだと公言しながらも自分を受け入れてくれた、と森永は喜びますが、宗一はそういうつもりではないと森永をはねのけます。
ここで森永は、宗一が嫌がっているのだと感じてしまいますがそうではありません。
森永は「だったら何で中途半端に受け入れたりしたんだ」と気持ちをぶつけ、宗一は「本当に嫌だったら殺してでも拒絶している、折れるにしたって文句ぐらい言わせろ」と反論します。
森永がいつも一方的に宗一に思いをぶつけ、宗一を抱いている時だけは自分のものだと思える、と実感していたけれども、宗一も決して、心底嫌がっているわけではない、というのが分かるのです。
しかし、宗一はホモ嫌いであり自分は異性愛者だと自覚しています。自分が男に抱かれ、森永に心惹かれていくのを認めたくはありません。
ゆっくりと、自分の気持ちが森永に向いていくことに向き合いたいのに、森永はそれに気づかずいつも強引に抱く。このすれ違いが、2人の間の気持ちのすれ違いや、勘違いの原因になるのです。
タイトルの「暴君」は、単純に宗一が乱暴者だからというわけではなく、作品をよくよく読み込むと、むしろ森永の方が「暴君」なのではないかと考えさせられます。
自分の好きだという感情を一方的にぶつけるだけで、宗一の態度の裏側にある本当の気持ちに寄り添うことがなかなかありません。
だいぶ終盤の巻で、ようやく宗一が自分の気持ちを認めて森永にも向き合うのですが、これまでの長い積み重ねと2人のすれ違いなどを考えると、非常に感慨深いです。しかしそこでハッピーエンドではなく、続巻ではさらにトラブルが発生し、ラブラブというわけには決していかないのが、この作品の魅力です。
『恋する暴君』の作画について
もともとが、少女漫画のように可愛らしく、初心者の方にも受け入れられやすい乙女的な絵なのですが、エッチなシーンはとてもエッチです。
長編漫画らしく、じょじょに絵柄は変わっていきます。近年のものでは宗一は綺麗な中にも可愛く男らしく、森永はひたすら可愛くで、これが好きな層にはたまりません。
安定感ある絵と構図、描きこんでいるのにうるさくない、電子で読んでも紙の書籍でも読みごたえのある作品です。
『恋する暴君』のメディア展開
『恋する暴君』は、ドラマCDとOVA化されています。漫画とは違い、導入部分で作品の解説的に話を進めてくれるので『チャレンジャーズ』を読んでいなくとも違和感なく、すぐに理解できるようになっています。
鳥海浩輔さんのかわいいけれども少し強引な、甘えた声のしょんぼり攻め、緑川光さんの乱暴ながらも可愛く色っぽい受けの声で、こちらも人気です。
特に緑川さんは、乱暴なセリフや怒鳴り声や叫び声をあげても「育ちの良い声」なので、芯から傲慢な人だと感じることの無いハマり役で、CD・OVAどちらもおすすめです。
『恋する暴君』の電子コミック情報
『恋する暴君』は2018年4月時点で1~10巻まで電子コミックとして主要な電子書籍ストアで発売されています。
■ 恋する暴君 1巻
著者名:高永ひなこ
出版社:GUSH COMICS/海王社
連載誌・レーベル:GUSH COMICS
ページ数:179ページ
立読ページ数:27ページ
ファイルサイズ:61.1MB
対応デバイス:Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/ブラウザ楽読み
価格:600円 (税別)
※作品情報や価格は、国内最大級の電子書籍ストア「eBookJapan」内の情報となります。
まとめ
みどころの部分でのとおり、ようやく心が繋がることができた、と実感してもまだまだ話は続きます。
8巻でようやく2人の関係に区切りがつき、後書きでも「最終章です」とあるのですが、関係ができあがっているわけではなく「今後も2人の関係をぽちぽちと書いていければ」とあります。
GUSHでも連載中なので、トラブルに巻き込まれたり、少しすれ違ったりしながらもさらに絆を強めていくことでしょう。今後もこの作品から目が離せません。

この記事を書いている人Private Works
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